千日紅の咲く庭で
◆◆
「ただいま」
玄関に入るといつもの癖で、家の中にいつものように呼びかけた。
家の中からは何も返事が帰ってこない。
あぁ、そうか。誰も居ないんだった。
呼びかけた後にお母さんはもう居ないことを思い出した。
多分これからも、こうやってふとした時に思いだすんだろうな、なんだか急に寂しくなって大きくため息をついた。
ふと見ると玄関には、私の靴よりも一回り以上も大きな岳の靴があって、なんだかちょっとほっとしたような、安心した気分になった。
「居るんなら、お帰りくらい言ってくれたって良いじゃない」
私は玄関でパンプスを脱ぎながら、1人でブツブツ呟いた。