千日紅の咲く庭で
「ただいま」

リビングに入ると、パソコンに向かって仕事している岳が視界に入ってきた。

お帰りとも言わず、私を視界に捉えようともせず、真っ直ぐにパソコン画面を睨んで、眉間に皺を寄せている機嫌悪そうな岳。


「ただいま」

聞こえてなかったのかな、なんて思いながらもう一度小さく岳に向かって声を掛ける。

「聞こえてるし。っていうか、この家の壁、薄い」

むすっとして言う岳の言葉に、岳が何を言いたいのかが分からない。



「えっ?そう?冬も結構温かいけど。」

きっと私の答は岳にとって、とんちんかんな答だったのだろう。


岳は玄関の方を指さして、眉間に皺を寄せて私を睨みつけた。


「バカ花梨。外の声、全部聞こえてる。」

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