千日紅の咲く庭で
「美知おばさん、すみませんでした」

ようやく落ち着いた私は、鼻を啜りながら美知おばさんに頭を下げた。


「気にしなくていいのよ、花梨ちゃん。泣きたい時は泣きなさい」

美知おばさんは柔らかく微笑んで、私を慰めるように優しく話しかけながら、私の目の前にホカホカの湯気のたつマグカップを置いてくれた。


マグカップには、柔らかな甘い匂いのするホットミルクだった。
甘い匂いに誘われるように、一口だけホットミルクを口にした。


それは、あの日以来、時々岳が作ってくれるホットミルクの味と同じで、心が落ち着いていくのが分かった。


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