千日紅の咲く庭で
「花梨、帰るぞ」

私がホットミルクを飲みほした頃、タイミングを見計らったかのように岳はキッチンにやってきた。

今までの一連の出来事だって見ていたはずなのに、何事もなかったかのように、ぶつくさとした口調で私に話しかけてきた。



「1人で帰れるよ。」

徒歩3分の距離。歩道橋を渡ればすぐに我が家。

29歳になった大人が1人で帰れないわけがない。

だから、自信満々に断った。


それなのに。

「何、言ってんだ」
「何、言ってるの」

岳と美知おばさんの声がシンクロした。


さすが、親子。
そう思ったのだけど、岳よりも美知おばさんが怒っていたから、私は思わず肩を竦めて小さくなった。


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