千日紅の咲く庭で
「バカ花梨、本当に鈍くさい」

私の躓いた姿を見ながら岳は眉間に皺を寄せて、少しだけ面倒くさそうな表情を見せた。

岳はスイカを左手から右手に持ち替え、左側を歩く私の手を、空いた左手でを握った。


「ちょ、ちょっと!!大丈夫だってば」

急な出来事に私は焦る。
岳にまで伝わるんじゃないかって思えるほど、私の鼓動は一気に急加速して高鳴ってしまう。

「貧血のくせに、バランス崩して倒れたらどうすんだよ、バカ花梨!!」


いつもと同じ口調で、口は悪いくせに、繋がれた手は暖かで、私の全神経は繋がれた手の部分に集中してしまっているような気さえしてくる。


何度も1人で歩いて帰れるって、手を繋がなくたって大丈夫だって岳には訴えたのだけれど、結局岳は手を離してはくれなかった。

私は家まで岳の暖かい手に繋がれたままだった。

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