魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


冗談? それとも……?
彼の真意を探ろうにも、穏やかな笑みからは何も読み取れない。とはいえ、「ただのお出掛け」を強調されてしまっては、断るのも失礼だ。それに、発言を撤回する気配は彼にない。


「それはもちろん構わないのですが、蓮様に確認を取ってからでもよろしいでしょうか……?」


以前、椿様とはあまり話さないように、と釘を刺されてしまっているし、かなり今更かもしれないけれど、一応許可取りは必要だ。それに、私は大前提として蓮様の執事なのだから、彼の傍を離れる時間はあまり長く取りたくない。


「ああ、うん。むしろ蓮にはきちんと話して欲しいかな。俺と、二人で出掛けてくるよって」

「はあ」


彼の意図はよく分からないけれど、蓮様にご報告をすることは絶対事項のようだ。
分かりました、と頷いて、アイスティーを飲み干す。

それにしても、椿様と二人でお出掛けとは一体。
彼とはほとんど昼休みにしか会わないし話さないし、何か共通の趣味があるわけでもない。間がもつだろうか、という不安はもちろん、私は一方的に彼に対して苦手意識を持っていた。

チャイムが鳴り、椿様が「それじゃあよろしくね」と立ち上がる。


「蓮様、だめって言ってくれないかなあ……」


一人になった中庭で、思わずそんなことをぼやいてしまう昼下がりだった。

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