魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



「は? なんて?」


夕食後、蓮様のお部屋の扉をノックする。
この時間帯に私が彼の元を訪れることはほとんどない。少し驚いた様子で、蓮様は私に「どうしたの」と促した。

そして。


「ですから……椿様と、外出することになりまして……」


今一度そう述べれば、蓮様は端正なお顔を歪める。


「意味分かんないんだけど。何で君と椿が?」

「それは私もさっぱりなんですが、椿様からお誘いいただいたもので……」

「あっそう」


端的に返答した彼は、「で?」と不服そうに腕を組んだ。


「行くの? それ」

「え、ええと……椿様は蓮様のご友人ですし、お断りするのも失礼かと思ったのですが、ひとまず蓮様にご報告をと思いまして」


本音としては、理由なんてどうでもいいので行くなと言って欲しい。そんな心の叫びを丸ごとぶつけるわけにもいかず、へどもどと言い募ってしまう。


「君は行きたいの?」


後ろめたさに目を伏せていると、蓮様が問うてきた。
心の中を読まれてしまったみたいで焦ったけれど、きっと言うならここしかないと思い、私は意を決して顔を上げる。


「正直、椿様と二人では不安なんです。粗相をしてしまうのではないかと緊張してしまいますし……」

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