魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
嘘ではないものの、これが一番の理由かと聞かれればそうではない。だからといって椿様のことが苦手だ、とストレートに告げるわけにもいかず、それらしい言い訳を手繰り寄せた。
「蓮様もご一緒に、というのは……だめですかね……」
「だめだろうね」
即答である。う、と喉の奥で呻き声のようなものを上げてしまった。
「椿のことだから、デートに行こうとか言われたんでしょ」
「えッ」
「それで僕がついて行ったら、後から何言われるか分かったもんじゃない」
「そ、そんな……」
早々に希望が打ち砕かれ、思わず肩を落とす。
どうしよう、やっぱり私一人で乗り切るしかないのかな。それともお断りする? いやいや、それは失礼に値するし。
悶々と頭を回転させる私を横目に、蓮様は何やら思案顔だった。そしてふと視線をこちらに寄越し、静かに尋ねる。
「そんなに僕に来て欲しい?」
そりゃあ、可能ならもちろん。内心激しく頷きながらも、「そうして頂けると非常に助かります」と控えめに頼み込む。
「……じゃあ、椿に言っておいて。『デート』には、もう一人友達を連れてくるって」
「友達……」
「僕の名前は言わないでよ。言った時点で却下されるのがオチ」
「か、かしこまりました!」
どうやら危機回避はできたようだ。
助かった、と胸を撫で下ろし、目の前の主人に両手を合わせた。