魔法をかけて、僕のシークレット・リリー



天気は快晴。絶好のお出掛け日和である。
日曜日の街は活気に溢れていて、親子連れやカップルが多く見受けられた。

椿様との待ち合わせ場所まであと少しといったところで、隣の足音が止む。


「蓮様、どうされましたか?」


神妙な面持ちで立ち止まる彼に呼びかければ、その顔が上がると同時、胸下まであるココナッツブラウンの毛先が揺れた。


「……本当にバレないと思う?」

「今更何を仰るんですか。完璧です、最高です! 今の蓮様は可愛らしい女の子ですよ!」

「それもそれで複雑なんだけど」


――私の友人を一人、連れてきてもよろしいですか。
そんな提案に、椿様は寛容にも了承して下さった。今日はまさにその決戦の日である。


『僕が行ったら椿は気に食わないだろうから』


先日、そう前置きした蓮様は、なんと自ら私にメイクを施して欲しいと依頼してきた。つまり全くの別人、私の女友達としてついて来て下さることになったのだ。

変装も兼ねているため、ウィッグは彼の地毛と異なる色にし、メイクもややしっかりと。
以前できなかったオレンジメイクに再チャレンジしたくて、アイシャドウは瑞々しい蜜柑色。可愛らしい頬を演出するチークは横長に丸く入れて、弾けるようなアップルブラウンを唇にのせた。


「君は随分楽しそうだね」

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