魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
む、と不機嫌そうな顔をした蓮様だけれど、その表情すら可愛らしい。
私は今一度彼を上から下までじっくりと観察して、完成度の高さに自惚れた。
レース付きの白いブラウスに劣らない、細く綺麗な手足。イエローのフリルスカートも、彼女にかかれば違和感がない。
メイクもコーディネートも自分が担ったとはいえ、あまりにも美人すぎる。
「すごくすごく楽しかったですよ! 蓮様は何でもお似合いなので、随分迷ってしまいましたが」
「あ、そう……」
行きましょうか、と歩き出した私に、蓮様がストップをかける。
「待って。椿の前では、僕に敬語とか使わないでよ。あくまでも君の『女友達』なんだからね」
「あっ、そうですよね! 気を付けます!」
普段の癖でうっかりしていては、変装も意味がない。
よし、と意気込んだ私に、蓮様は突然歩くスピードを上げた。
「行くよ。百合」
「えっ!? え、あ、」
「友達なら名前で呼んだ方が自然でしょ」
「そうですけど……!」
心臓に悪い、とっても!
唐突な不整脈に襲われ、顔が熱い。ぱたぱたと両手で扇ぎながら、すっかりオンナノコに化けた背中を追いかけた。
「椿様、お待たせ致しました!」