魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


既に到着していた人影に声を掛ければ、アッシュブラウンの後頭部が振り返る。


「ああ、百合ちゃん。……と、」


私を視界に入れて柔和な笑みを浮かべた椿様だったものの、その隣に視線を滑らせ固まってしまった。
気持ちは分かる。今の蓮様は磨き抜かれた宝石のように綺麗で、ここに来るまでも周りからの視線を集めていたのだ。


「椿様、ご紹介いたしますね。こちら私の友人の……」


蓮様に手を向けそこまで口走ったところで、彼女(・・)の名前を考えていないことに気が付く。
詰めが甘かった、どうしよう、と言い淀んでいると、蓮様が口を開いた。


「レイ」


たった二音だったけれど、声のトーンがいつもより明るい。これなら少し声が低めの女の子でまかり通るだろう。


「レイちゃん? 俺は七重椿です。よろしくね」


椿様も特に訝しむ様子はない。握手まで交わし、ひとまず第一関門は突破できたようだ。


「じゃあ行こうか。そこに車つけてあるから」

「えっ、椿様が運転されるんですか!?」

「はは、まさか。うちの執事だよ」

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