魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
蓮様が短く答え、目を伏せる。
シェフの男性が去ってからナプキンを二つ折りにして膝に置いていると、椿様が口を開いた。
「百合ちゃん、林檎嫌いなの?」
顔を上げた途端交わった視線に、思わず肩が跳ねる。
『君は、蓮の何なの?』
あの時と僅かにリンクする、巣食うような瞳が私を捉えた。彼は微笑んでいる――多分。だけれど、やはり品定めされているような気がしてならないのだ。
「ああ……ええと、そうなんです。林檎だけはどうしても駄目で……」
「へえ。珍しいよね、あんまり林檎が嫌いって聞かなくない?」
へらへらと笑ってやり過ごしていると、椿様が唐突に「ね?」と蓮様の方を向く。
「レイちゃんもそう思わない?」
私たちの会話を静観していた蓮様は、問いかけに対して穏やかに笑い返すだけだった。その少々困ったような笑顔さえも絵になるのだから、美人はすごい。
「百合ちゃんとレイちゃんはどういう繋がりなの?」
「あ……え、と、中学校が同じで」
「そうなんだ。二人とも可愛いから、並んでると目立つよね。今日も初めて会った時ちょっとびっくりした」
「そんなことは……れ、レイ、ちゃんは、綺麗ですけど……」