魔法をかけて、僕のシークレット・リリー


気難しい、との評価を蓮様に下されただけあって、彼の第一印象は確かに厳かだった。しかしそれは失礼ながら、元々の顔のせいでもあるのだと思う。


「先程、林檎が食べられないと申したんですが……実は、私ではなくて、もう一人の彼女のことでして」


間もなくデザートが提供されるといったところだった。
恐らく準備をしていたのだろう。彼は「そうでしたか」と頷き、それから怪訝そうに問うた。


「椿様から、本日のデザートに林檎を使用するとお聞きになりましたか?」

「え? いえ、何も……」


どうしてそんなことを聞くのだろう。首を傾げた私に、彼は告げる。


「そうですか。私はてっきり、聞いているものだと……本日提供するデザートは、林檎のコンポートを使用していますから」

「そうなんですか……!」


だったら、尚更言っておいて良かった。
一人安堵していると、節くれだった指を顎に当て、神妙に彼が宙を見つめる。


「しかし、椿様は本日のメニューを全てご存じのはずですが……ご友人の方の苦手なものは、ご存じなかったのでしょうか」


そう呟かれたと同時、厨房から彼を呼ぶ声がした。


「ああ、申し訳ございません。では、林檎が入っていないお皿はご友人の方に」

「は、はい。よろしくお願いします」

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