魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
トーンを上げることを諦めた蓮様が、短く降伏する。
「まあ、最初に会った時からかな。握手して、なんか見たことある手だなあって思ったんだけど、蓮とホクロの位置が全く同じ。喋り方の癖も、歩き方も」
長く付き合ってきた友人の目は誤魔化せなかったらしい。椿様は、ふう、と息を吐き出すと、苦笑気味に述べた。
「それに加えて『林檎』ときた。もう確定でしょ。林檎苦手な人なんてそうそういないよ、ピーマンじゃあるまいし」
で、と話題転換の音を匂わせた椿様が、質問を投げる。
「蓮は何が気に食わなかったの。俺が百合ちゃんを誘ったこと?」
「……別に」
「だろうね。そう言うとは思ったよ。だって蓮には桜がいるんだから、百合ちゃんがどうしようと関係ないよね。そうでしょ?」
何だか雲行きが怪しい。二人の空気が剣呑なものになっている。
刹那、椿様の横顔が酷く冷たく、侮蔑的に歪んだ。
「わざわざ女装までしてついてくるなんてさ……正直、気持ち悪いよ」