魔法をかけて、僕のシークレット・リリー
間髪入れずに責められて、半ば怒りにも似た感情が渦巻く。
だって、じゃあどうしろっていうの。馬鹿正直に、私はあなたのことが好きだから結婚しないで欲しい、とでも言えばいいのだろうか。困らせるのが目に見えているのに?
「僕と桜の話、聞いてたんでしょ」
蓮様がため息交じりに断定する。
まだしばらくは誰も戻って来ないだろう。このままではきっと、埒が明かない。
私は諦めて、少しだけ核心に触れることにした。
「……立ち聞いてしまったことは、お詫び致します。その上で申し上げますが、蓮様は桜様のお気持ちを知って、何も感じられなかったのですか?」
「桜の気持ち?」
私の発言内容が予想外だったようで、彼は首を傾げる。構わず続けた。
「ご自身を慕って下さる方に対して、あまりにも薄情なのではないかと、そう申し上げているのです。ましてや、桜様は婚約者なのですから」
自分で言っていて辛くなってくる。婚約者、と声に出した時、少しだけ鼻の奥がつんとした。
唇を噛んで、ぎゅ、と目を瞑る。動揺を誤魔化すようにまた口を動かす。
「桜様がどれだけ蓮様のことを、」
「もうその話はいいよ」