マザー症候群


 凛が美波に。土下座をしたのだ。土下座を。それも、地面に頭を擦り付けて。
 「部長。お願いです。一生のお願いです。游と別れて下さい。游は私の命です。いま、生きているのは。命があるのは・・・。游が。遊がいるからです。游を失えば、私はもう生きて行く事は出来ません。部長。お願いです。一生のお願いです」
 今まで高飛車だった凛の態度が豹変した。
 凛は必死に。涙を浮かべて美波に懇願している。それも、何度も何度も地面に頭を擦り付けて。それは、凛の魂の叫びだった。
 美波は、凛の必死の願いを聞いて心を打たれた。
 だが、どうしてよいかわからなくなった。
 美波は立ち止まって、回転しない頭で暫し思考。思考。思考。
 返事を聞けなかった凛は、ポケットからナイフを取り出した。
 凛。無表情。無感情。
 ただ、凛の手だけが、別の指令を受けているように動き始めた。。
 ナイフが。開 い た。
 次の瞬間。ナイフが凛の左手の血管を切り裂いた。


 シュワ―。


 真っ赤な鮮血が勢いよく吹き出した。



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