マザー症候群

 美波、コンビニに入ると、駆け足で酒売り場に。 
 日本酒、焼酎の横にウイスキーの一群が。
 「あった。地獄で仏」
 美波の震える手が一本の瓶を握り締めた。
 それは、地獄から手を差し伸べる愛しの君。ウイスキーの小瓶だった。
 美波、逸る気持ちを抑え勘定を済ませると、コンビニの外へ。
 眼前の国道では、左右に車が慌ただしく走り回っている。
 それを横目で見ながら、いきなり美波がウイスキーの小瓶をラッパ飲み。
 「うめえーー。たまらん。地獄からの生還だあ」
 美波、この世に生還の一声。
 酒が入ると、美波の思考力が正常に動き出した。
 「あっ、忘れていた。電話だ。電話をしなくっちゃ」
 美波は游への電話を思い出した。
 それまでは、脳みそが、頭の中が、アルコールの呪縛にくくり付けられていた。
 凛がナイフで腕を切った時。
 「大変だ。どうしよう」
 「酒だ。酒が飲みたーい」
 二つの感情が衝突し、美波の頭の中は完全にパニック。


 
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