マザー症候群
「誰か救急車を」
たまたま美波の口から出たこの言葉が、思いもかけない状況をうまく運んでくれた。
と、言う訳で游に真っ先に電話するはずが、今になってしまったのだ。
美波はスマホから游に電話をした。片方の耳を塞ぎ、車の騒音を気にしながら。
「遊。私。大変なの」
游の声が聞こえて来た。
「あ、部長。何があったんすか」
「あなたの彼女がナイフで腕を切ったの」
「えっ、凛が」
游の驚く顔が、電話越しでも美波には目に見えるようだった。
「容態は?」
「処置室に入ったままで、よく分からない」
「そうすか」
「今から病院に来れる?」
美波が游に病院に来れるか尋ねた。
「行きやす」
「そう。だったら○○病院1階の処置室の前にいるわ」
「わかりやした。じゃ後で」
游が慌てて電話を切った。
美波は電話を終えると病院に戻った。