マザー症候群

 游は首を傾げた。しかし、幾ら考えても、游にははその答えは分からなかった。
 美波は病院の玄関ホールを出ると、急いでバッグの中からウイスキーの小瓶を取り出した。その瓶には、底から2㎝程の琥珀色の液体が入っている。
 美波は、それを一気に飲み干した。

 カーー。

 喉に衝撃が走る。
 すると、先程まで感じていた喘ぐ程の渇きが不思議な程に消えて行った。
 游といる間、美波は必死でアルコールを我慢していた。限界ぎりぎりまで。
 游には、自分の愚かな姿を見せたくはなかった。
 プライド。そう。それが美波の精一杯のプライドだった。
 この男の前だけは、美しい女でありたかった。だから、醜い女を我慢の限界まで閉じ込めていた。
 あと僅かの・・・。これが美波の意地だった。

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