高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
藤崎社長はまじろきもせずわたしをみていた。

「時頼に何かされましたか?」

「……いえ」

「そうですか。それならいいんですが。時頼は手に負えないことがあるので。仕事でも恋愛でも」

藤崎社長はそういうと遠くをみつめていた。わたしの頼りないこたえに、少しだけ寂しそうだった。

「つむぎさん、もしかして時頼のこと、好きになったんでしょうか」

「いえ、そんな。わたしには」

「そうでしたね。彼氏さんがいますからね」

藤崎社長だって婚約者がいるじゃないのと反論したくなったけれど、やめておいた。

「それで、彼氏さんはお元気なんでしょうか」

「彼氏……朝倉さんがぜひ社長に紹介してほしいといっていました」

「そうですか。いい機会ですね。連絡先教えてくださいますか」

走って自分の席にあるカバンから以前もらっていた名刺を取り出し、藤崎社長に渡した。

「了解しました。時間があるときに会うことにします」

名刺をじっとみつめ、机の上に置くと、わたしの腕をとり、ぎゅっと抱きしめられた。

「引きとめて送ればよかった」

「……藤崎社長」

藤崎社長の熱が伝わる。やめてほしいのに、まだ続けたいという欲求が先立つ。

「済んだことは仕方のないことです」

「机の上にあった写真の女性はもしかして」

そういうと藤崎社長の顔が近づくと、唇で口を塞がれた。

「もっとつむぎさんのことを知りたくなりました」

藤崎社長は取り繕うようにニコリと笑いかけた。
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