高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
というと、藤崎社長も時頼さんは顔を見合わせ笑っている。

「何、朝から想像ふくらませちゃってるんだよ。ははん、だからもちっとしてるのか」

時頼さんが半笑いしながら嫌味をいっているそばで、藤崎社長は苦笑いを浮かべ、心配そうにわたしの背中の部分を指差す。

「つむぎさんのジャケットの裾がほころんでいるんですけど。さっき転んだときにほつれてしまったんでしょう。脱いでもらえれば僕が直しますよ」

あわてて着ていたジャケットを脱ぐ。

確かに裾の部分が軽く縦に裂けて生地の糸が飛び出している。

「え、これは安物なんで」

「遠慮なさらずに」

と、藤崎社長はわたしの手のなかにあったジャケットを手にとり、自分のデスクの上に置く。

すっと立ち上がり、奥の棚から裁縫道具を持ってやってきた。

針と糸を取り出し、ジャケットを手慣れた手つきでほつれていた部分を直してくれた。

「これでどうでしょうか」

ジャケットを渡され、直してくれた部分を確認すると手縫いで早く縫ったのに、ジャケットの裾がきれいに仕上がっている。

「あ、ありがとうございました」

「これで安心して仕事ができますね」

「さあ、仕事仕事。つむぎが余計な想像しちゃうから仕事になんねえか」

時頼さんは両腕を天井へあげ、体を伸ばしながらわたしを見下げてクスクスと笑っている。

わたしも朝から何想像してるんだろう。

軽く妄想してしまう癖を直さないと仕事にならないし。
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