高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「以前からあるこのマーケティング用のグラフなんですか、ちょっと見ずらいので直してくれませんか?」

「は、はい」

藤崎社長から事務の仕事を簡単に教えてくれた。

作業をしている人たちの庶務的なことだったり、これから作ろうとしているスマホアプリ用のアイデアの一部である資料を見やすく作ったり、アプリのサンプルが出来上がったときには動作確認をしたり改善点を探したりするお手伝いをお願いされた。

意外と顔が近いせいか、藤崎社長の長いまつげがまばたきで揺れるたび、ドキっと胸がときめいてしまう。

「どうしました?」

「……え、いえ」

どうしても藤崎社長を見とれてしまう。

「ぼーっとしてちゃ、せっかくの仕事がたまるぞ」

一瞬で夢から引き返された感じがする。

呆れているのか、口を半開きにしつつ、こちらを向く時頼さんに聞いてないし。

時頼さんを無視しつつ仕事に集中していると、

「さて、お昼になりましたよ、つむぎさん」

と、隣で藤崎社長が話しかけてきた。

パソコンの時計をみると、すでにお昼の12時を過ぎている。

「お昼なんですが、用事はありますか?」

「ありませんが」

「一緒に同行してもらいます。時頼は?」

「遠慮する。つむぎの大食いなんぞ見たくないし」

口を尖らせながら時頼さんはいう。相変わらずむかつく返事の仕方。

「知り合いのお店へお連れしますよ」

と、藤崎社長は裁縫のときのように、受話器をとり、長い指先でダイヤルボタンを押すと、どこかへ連絡をしていた。
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