高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
時頼さんにのぞきこむような感じで顔をみられている。

藤崎社長と同じく吸い込まれそうな瞳に体が硬直してしまう。

わたしの瞳から今の気持ちを読み取ろうとしているのだろうか。

そんなに至近距離で精悍な顔を近づかせるなんてずるい。胸の鼓動が早くなっている。

「時頼さん、わたし……」

目をつぶり、必死になってその視線から逃れようとしたとき、

「お二人とも、お昼から何をしてるんでしょう」

わたしと時頼さんがそばにいることに関して冷静な顔つきでこちらに近づいてきた。

元はと言えば藤崎社長が仕掛けてきたんじゃない。

「あの、これは」

「兄貴、つむぎに何をいったんだ?」

藤崎社長はいたって落ち着きを払いながら自分の席に座る。

「責任とってもらいましょうか、って冗談をいっただけ」

「はあ、何それ」

「初めて会ってその日のランチだ。少しでも溶け込んでほしいな、って思っていっただけ」

じゃあ、やっぱり冗談だったんだ。少し期待してしまって恥ずかしい。わたしの顔をみて藤崎社長は穏やかに笑う。

「兄貴の冗談に有頂天になってたってことか」

「……そんなことは」

「あーあ。心配して損した。いつか借りを返せよ、つむぎ」

「ちょ、ちょっとそんなこと勝手に」

「兄貴と一緒、冗談だよ。そんなのもわかんねえのかよ」

ちょっとむくれているのは気のせいだろうか。

「さ、仕事しましょうかね。なかなか仕事モードにさせてくれませんね。困りましたねえ」

と、朗らかな笑顔を振りまいている。

仕事をやりづらくしているのは藤崎社長本人なのになあ、と思いながら、午前から引き続いている資料の続きをやり始めた。

「時頼、クライアントさんから新しい依頼がきている。これから打ち合わせをしたいそうだ」

「はいはい、了解」

時頼、とぴしゃっというと、はい、社長といって軽く舌を出していそいそと外へいってしまった。
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