高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
突き放せないなんて、由基がいるのに、どうして。

そんな不安な状況を知らない藤崎社長は口角を上げ、満足そうにわたしの顔をみている。

「僕からの提案なんですが、時頼には秘密にしましょう」

「……え」

「いろいろ邪魔されては困りますし、つむぎさんだって時頼の性格がわかったみたいなので嫌でしょう」

「え、ええ」

藤崎社長に押し切られてしまったけれど、本当にこれでよかったのかな。

この先どうなるんだろう。藤崎社長の行動によってはもしかして……。

どうしても別の方向へ頭が働いてしまう。

そんなことはありえない。あくまで仕事上でのこと。

それ以上のことは踏み込んでこないと信じよう。

藤崎社長はれっきとしたいい大人の社長なんだし。

「今日はこの辺で。付き合わせてすみませんね。それではまた明日、つむぎさん」

「……お先に失礼します」

わたしはいそいでカバンを取り、そのまま逃げるように駆け足で会社を後にした。

会社を出て、シェアオフィスビルから出るまで緊張して駆ける足がもつれそうでおかしい。

さすがに藤崎社長は追いかけてはこないなと振り返り、ようやく普通の速度で歩き、家につくと、がくんと力が抜け落ちた。

出勤初日でいろいろあったけど、まさか藤崎社長がわたしのことを好きって。

笑い話の度を超えてる。どうしよう、明日から。

気持ちがおさまらず、どうしても由基に知らせたくて出向先のことを書いてメッセージを送った。

もちろん彼女の件は伏せておいたけれど。

夕飯を食べてお風呂に入ろうとしてスマホをのぞきみるも、返事がまったくこなかった。

どうしてこういうときに連絡してこないんだろう。

由基が唯一の頼みの綱なのに。


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