高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
昨日やり残していた資料づくりを進めていた。

そういえばこのグラフの数字って合わないんだけどな、と思いながら資料と照らし合わせていると、さっきから気になってはいたが、向かい側から視線を感じる。

視線の先には時頼さんだった。

「あ、あの、どうかしましたか?」

と顔を上げて時頼さんに話しかけるもすぐに顔をそらし、パソコンの画面をにらんでいた。

それをみていた藤崎社長はくすっと小声で笑いながらやはり仕事を進めている。

二人ともいたって普通に仕事をしているんだけど、この雰囲気は現実のものなのだろうか。

やっぱりどうしてもグラフの数字が合わなくて隣の藤崎社長に声をかけた。

「社長、あの、このグラフの数字が合わなくて」

「ここですね。本当だ。確かこの資料が間違っていますね。ちょっと待ってくださいね」

と、わたしをみつめながら話を進めている。

人差し指がわたしの手の甲に触れる。それだけでどきんと胸がうずいた。

「何を慌てているんですか?」

わたしを試すような眼差しの藤崎社長。

冷静に対応しようとしてもできない自分がもどかしい。

「気にしすぎていませんか? それぐらい僕のことを考えてくれているんでしょうか」

「そ、そんなことありませんって」

「そういって顔が赤くなっていますよ。かわいいですねえ」

藤崎社長は甘く低い声で耳元でささやいた。

完全に遊ばれているんだ、わたし。

「どうしたんです? 暗い顔をして。体調が悪いんでしょうかね」

と、わたしのおでこに大きな手がかぶさった。時頼さんのいる前でそんなことしないで。

「しゃ、社長……」

「熱出したってすぐに冷めるさ。つむぎ、今日俺のアシスタントな」

と、時頼さんは少しむくれた顔をしながら冷たく言い放つ。

「えっ」

「つむぎさん、時頼の仕事のアシスタント、頼みましたよ」

気がつけば藤崎社長の手はわたしのおでこから離れ、グラフの載った資料に手をかけていた。
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