高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
しばしカフェセットを堪能していたところだった。

まだわたしが半分しか食べ進んでいないところで、時頼さんはすでにシフォンケーキをたいらげ、満足そうにアイスコーヒーを飲んでいた。

ちらちらと食べているわたしをみている。

「ったく、女っ気がねえな。おまえ」

「別に女を出して仕事しようって思ってないですから」

まあ、時頼さんはわたしよりももっと別の色っぽい女がお好みだろうからそんなのんきなこというんだろう。

仕事にきているんだから洋服なんて地味なものでいい。

というか、結局のところ無難に地味な服で過ごしているほうが楽なんだけど。

「もったいねえなあ」

誰と比較してるんだろう。

あのバッグで叩かれてたケバい女のことを考えてるんじゃないんだろうか。

「本当ならわたしよりももう少し美人で体型もスリムな人だったらよかったって思ってるんですよね」

「やっぱりかたつむりだな、おまえ。早く食えよ。残り食っちまうぞ、あ?」

「だからその呼び方やめてくださいよ。あっ……」

時頼さんがすっと手をのばしたときだ。

わたしのコップにあたり、飲み残しのコーヒーをこぼしてしまった。

テーブルから床へこぼれるはずが、すべてわたしのスカートに大きな茶色いシミをつくっている。

「大丈夫……じゃねえよな」

ったく、使えねえ女だな、って言われるかと思ってた。

急いで店員さんが駆けつけておしぼりやタオルで拭こうとしたところ、持ってきた新しい時頼さんが率先してわたしのスカートにかかるコーヒーのこぼれた部分を拭こうとした。

「やりますから、自分で」

「……悪かった。ごめん」

と、いつもより弱々しい声でわたしにあやまった。

大きくみえる時頼さんの姿がいつもより小さくみえた。
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