高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
どうやら二階堂さんの知り合いの店が週末あいていたらしく、すんなり予約がとれたと満足そうに話していた。

「おっと、そろそろ別の仕事に呼ばれてるんだった。それじゃお先に」

と、ぶんぶん手を振って二階堂さんは事務所から出ていった。

さっきまでの二階堂さんの嵐が嘘だったかのように、静寂さが戻る。

しばらくして資料を棚に戻して自分の席に戻ろうとしたとき、コホンと小さく時頼さんが咳払いをしたので振り返った。

「星彦に振り回されてるみたいだけど、大丈夫か」

時頼さんの声が若干、低い。

じっとわたしのことをみつめていたので、なんだか恥ずかしくなって視線をそらした。

二階堂さんの性格を知っているからこその心配をしてくれたのかな。

「あ、はい」

「無理すんなよ」

ぱっと時頼さんに視線を戻すと、時頼さんは目を細め、やさしい眼差しを送る。

やわらかな声のトーンとまっすぐ見据える目ヂカラに胸を打った。

これで何人の女性がコロリと時頼さんにおちていったんだろうと思うと現実にうまく帰ることができた。

「あ、ありがとうございます」

「っていって、ウチ帰ってお菓子とか食べてまたもちっとしちゃうんだろうけどさ」

「ひどいっ」

「もちっとしてたほうがつむぎらしいっていうことだよ」

納得がいかなかったけど、いつもの時頼さんだわ、と思い、安心してやりかけの仕事をはじめた。
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