高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
みんな、気を使ってそういってくれているんだな、と思って少しだけ嬉しかった。

「今日はわたしのために、時間を割いてくださって、ありがとうございました」

まだ食事中だけど、早めにお礼がいいたかった。

「いいんですよ。みなさん、つむぎさんに興味がありますから」

「あのさ、片桐ちゃん、ひとつ、聞いてもいい?」

と、二階堂さんは右の手のひらを広げ、腕をあげている。

「は、はい。なんでしょう」

「好きなひと、いるの?」

「え、あの」

二階堂さんの質問にすんなりと答えられない自分に戸惑った。

「つむぎさんには、ちゃんとおつきあいしているひとがいるそうですよ」

「ええ、そうなの? 付き合ってるっていう雰囲気っていうのかな、そういうのが見えてこないんだよね」

二階堂さんの言葉に、どきっとする。

ちらりと横に目をやると、藤崎社長は黙ってお酒を飲んでいた。

「そんなヤツ、やめて、オレと付き合っちゃう? オレだったら満足させちゃうよ。あんなことやら、こんなことやら」

「ちょっと、なにをいってるんですか」

「煮え切らない兄弟よりも先頭を切ろうかなーって」

「なにバカなこといってるんだよ。こんなもちっとしてるつむぎなんか、相手にするわけないだろ。かたつむりだし」

「面白いことをいいますね、星彦」

3人の気持ちもよそに、わたしの心が急に曇り出した。

「かたつむりだなんて」

「どうしたの、片桐ちゃん」

「……かたつむりって、昔から、出向先でもよくからかわれてました」

「そうだったんだ。ヨリ、片桐ちゃんに対してマイナスポイントだね。つらかったね」

「そんなこと言われていたんですね。つむぎさんの丁寧な仕事姿をみてこなかったんでしょうか」

時頼さんがバツの悪そうな顔をしながら、できたての魚のグリルを食べていた。
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