高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
気づけばわたしの部屋の真ん中にあるソファにちょこんと座った藤崎社長がいる。

「ちょ、ちょっと社長!」

「どうかされましたか」

わたしの気持ちを逆なでするようにかわいらしく小首を傾げている。

「どういうことですか! 由基……彼のいる前で」

「そうでしたか。あの方が彼氏でしたか」

藤崎社長はあごに手をやりながら、優しい目つきのままでみている。

どうしてのんきなことが言えるんだろう。

「しかも外で」

「契約外でしたね。失礼しました。お詫びに正式に彼氏になりますよ」

「……お詫びって。ふざけないでください!」

どこまで冗談をいっているんだろう。

契約彼女から正式に彼女にするだなんて、都合かよすぎる。

「どうでしたか? 突然のキス」

「どうでしたか、って冷静に聞かないでくださいよ」

藤崎社長はわたしの言葉に耳を傾けず、おでこに手をあてて、ふう、と小さくため息をもらしている。

「ちょっと横になってもいいでしょうか。連日徹夜だったもので」

「あ、あの、横になってください」

「ありがとうございます。つむぎさん」

ソファに横になったので、タオルケットを上からかけてあげた。

くちびるをみる。あのちょうどいい肉厚のくちびるがわたしのくちびるに重なるなんて。

「どうしましたか。そんな顔、みせないでください」

「そんな顔って」

ソファ近くのドレッサーの鏡をみる。

両目から両頬にかけて涙がこぼれていた。
< 59 / 122 >

この作品をシェア

pagetop