高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
夕方になり、二階堂さんも取引先へ向かってひとりきりになった。

それをみはからったように藤崎社長が戻ってきた。

にこやかな笑顔をくれるのにグレーのジャケットが真っ先に目に入る。

「お疲れ様です」

気を取られないように小さく声をかけ、すぐにパソコンの画面に目を落とす。

「お疲れ様。どうしましたか?」

わたしの座る机の前にたつ藤崎社長の問いに答えがつまる。

「い、いえ」

土曜日の夜にあったことや、二階堂さんに教えてもらった婚約者のことで藤崎社長への想いがぐるぐるとかけめぐり、やるせない気持ちでいっぱいだ。

「何をはぐらかしているんですか」

何もこたえないでいると、軽くため息をもらし藤崎社長は自分の席についた。

「お先に失礼します」

頼まれた資料を時頼さんの机に戻す。

あんなかっこいいひとだから、好きなひとがいるに決まっている。

わたしが舞い上がっていただけ。

思い上がりもいいところだ。

自分のカバンをとって藤崎社長へ振り返らずそのままの足で事務所のドアノブに手をかけたとき、背後に藤崎社長が近づいてきた。

「そういう態度をとると、ますます気になります」

「……なんでもないですって」

わたしの身体を軽く押しのけ、藤崎社長は内側の鍵をかける。

わたしの右手首をとるとそのまま藤崎社長へ身体がぐいっとひっぱられた。
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