高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「果ててしまいましたね」

わたしを壁に背中をつけるようにして床に座らせた。

藤崎社長は向かい合わせでしゃがみこみ、クスクスと軽く笑うと、さっきまでわたしをまどわせた指へ愛おしそうに舌先をはわせていた。

「……社長は、心に想っている女性がいるんですか」

「ええ。いますよ」

あっさりと即答だった。

当たり前だよね。社長には婚約者がいるんだし。

「……そうですよね。だからわたしに」

「誰か知りたいですか?」

藤崎社長は試すような目をしている。ずきんと胸が痛くなる。

「知りたくありません」

「そうですか。おもしろいですね、恋愛って」

「ちっともおもしろくないですよ。わたしは、藤崎社長のことが」

言いかけてやめる。

わたしには言えることではない。

まだ彼氏とも別れていないのに、藤崎社長のこと、好きになっただなんて。

「さて、なんでしょうね」

「……なんでもありません。お疲れ様でした」

藤崎社長は立ち上がると、手を差しのべ、わたしの腕をひっぱるとまだ身体の奥底に余韻を残しながらもなんとか力を入れて立ち上がれた。

「送りましょうか?」

「……いいです。これ以上社長に迷惑をかけたくありませんから」

「そうですね。今夜はそれ以上のことになるかもしれませんからね」

藤崎社長の言葉をきかなかったふりをしていると、事務所のドアまで手をひいてくれて、内側のドアの鍵を開けてくれた。

「二人だけの秘密がどんどん増えますね、つむぎさん」

と、ドアを開けてもらいながら、耳元でささやかれた。

< 69 / 122 >

この作品をシェア

pagetop