高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
資料の数字や文字がぜんぜん頭の中に入ってこない。

藤崎社長からもらったおまじないのせいで。

あのあと、化粧室に駆け込んでシャツの襟になんとか隠れるように藤崎社長のつけたしるしをみつけた。

由基にもしてもらったことなんか一度もなかった。

藤崎社長の熱がわたしの身体に宿ったようでますます仕事に集中できない。

「片桐ちゃん、お疲れ様」

午後になって二階堂さんが事務所にやってきた。

くだけた声に緊張がゆるむ。

「二階堂さん」

「どうした、そんな顔して」

わたしの顔をみるなり、二階堂さんは駆け寄ってきてくれた。

「わたしどうしたらいいかなって」

「そんな顔してたら仕事にならないね。相談に乗るけど」

「ありがとうございます」

「オレも男の端くれだからね。片桐ちゃんみたいな子は放っておけなんだよね。仕事のこと? それともプライベートな話? その顔じゃあ、おもっきりプライベートな話だね。いいよ、聞くよ」

「わたし、彼氏がいるのに、他のひとのこと、好きになってしまったようで」

「で、時宗には話したの?」

黙ったまま、藤崎社長の名前を聞いただけで首筋の跡が甘くうずくのを受け入れていた。

「へえ。話してないんだ」

と、二階堂さんは目をぎらつかせて、にやっと軽く笑った。

「好きになったひとはどれぐらいつむぎちゃんのこと、想ってくれてるんだろうね」

「……わかりません」

「わかる気がするなあ。うらやましいよ、その人」

二階堂さんはポンポンとわたしの肩をたたいてくれた。
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