高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
仕事がしづらい。こういうときに限ってどうして二階堂さんは事務所にいないんだろう。

さすがに由基になんか相談ができないし。

次の日もその次の日も二人っきりで時頼さんからの視線から逃れられない。

「つむぎ、ちょっといいか?」

時頼さんの仕事中の真面目な声だというのに、びくんと体が反応する。

「は、はい」

自分の声が上ずってしまってなんだか恥ずかしい。

時頼さんに近づいて資料の説明を受けたとき、軽く指と指がぶつかった。

「この資料、よろしく頼むな」

「わ、わかりました」

時頼さんは冷静に指示してくれるというのに、意識をしてしまう。社会人失格だ。

静かな事務所のなかで必死になって雑念を追い払いながら、なんとか資料をまとめた。

「資料まとめましたので、確認を」

「つむぎ、あのさ、腰が引けてるけど」

時頼さんはわたしを指差しながらいたずらに笑みを浮かべている。

「だって……」

「とって食おうとしてるわけじゃないんだ」

「そうですけど」

「俺は気持ちに嘘つけないから。兄貴とは違ってね」

涼やかな顔を浮かべながら時頼さんはこたえる。

藤崎社長が早く帰ってきてほしいと思ってしまう気持ちが日々、強くなってきた。
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