高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
時頼さんは腕時計に目を落とし、机にあった資料をかき集めてカバンの中にしまいこんだ。

「兄貴、これから営業先に向かって直帰するから」

「時頼、お疲れ様」

「じゃあな、つむぎ。俺がいないからって、さみしがるなよ」

「え、あ、お疲れ様です……」

さっきまでにこやかだった藤崎社長は真顔になって時頼さんに冷たい視線を送っていた。

時頼さんが事務所から出ていってしばらく沈黙があった。

時頼さんの仕事を終えて帰ろうとしていたときだ。

「つむぎさん、いい子にしていましたか?」

甘く響く声が事務所中に跳ね返り、わたしの体の中に入ってくる。

ゆっくりと近づく靴の音を確かめながら、鼓動が早くなっていくのを感じた。

「時頼さんの元で仕事、しっかりやっていました。お疲れ様でした、わ、わたしも帰ろうかな」

カバンを持って立ち上がろうとしたとき、後ろから藤崎社長の大きな手によってぎゅっと手首を掴まれた。

「つむぎさん、お土産を渡したいのですが」

「あの、今度でいいですから」

「そうはいきませんよ。さて、おまじないの効力は切れましたか」

藤崎社長はゆっくりと器用にわたしの肩にかかった髪の毛をかきわけた。
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