高貴なる社長のストレートすぎる恋愛に辟易しています。
「ここが時頼さんのウチ?」

入り口前で思わず息を飲む。

多くのマンションが立ち並ぶ中、人通りの多い場所にひときわ目立つように商業施設を兼ね備えた30階建てのタワーマンションがあった。

マンションの裏に回って受付エントランスへ向かう。

茶色を基調とした受付カウンターには黒い制服姿の男女のコンシェルジュスタッフがいて、まるでホテルの受付と見違えるような設えだった。

女性スタッフに声をかけ、時頼さんに取り次いでもらう。

受付前のロビーのソファで待っていると、

「あれ、つむぎ、どうした?」

紺の半袖シャツに白いジーンズ姿のラフな格好の時頼さんがやってきた。

「荷物が会社に届いていたんですけど、明日使うものだったらいけないと思って」

「まあいい。ここじゃあなんだから」

時頼さんがわたしから段ボール箱を取り去ると、受付横にあるエレベーターホールへと促される。

施錠された自動ドアが開き、エレベーターに乗り込む。

最上階について、白い壁にかけられた調度品をみながらダークグレーのカーペットが敷き詰められた廊下を奥に進むと、同色のドアがみえた。

「うちにくるなんてな。俺が恋しくなったか?」

「そうじゃありませんって」

「俺にとってはラッキーだったけど」

「あの、わたしはこの辺で」

「せっかくなんだからウチに寄っていけよ」

「で、でも」

「ご厚意に甘えてみたら、いかかでしょう?」

後ずさりし、帰ろうとしていたところ、聞き覚えのある落ち着いた声が廊下に響き渡った。

後ろを振り返ると、藤崎社長がゆっくりと廊下を歩いてこちらへ向かってきた。

「いうのを忘れていましたね。ここは僕らの住むマンションなんですよ」
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