あなたに捧げる不機嫌な口付け
「……うん。あるよ」

「じゃあ、後で一つちょうだい」

「ん。今持ってくる」

「後ででいいよ」


今すぐ腰を浮かしかけるのを止める。


今日じゃなくたっていいよ。

ずっと先になったっていい。


だって、基本は恭介さんが開けてくれるんだから大丈夫だよ。


それより今は、もっと話をしよう。


ねえ、恭介さん。




二人でお菓子を食べた。

ご飯を食べに行った。

買い物をした。

デートをした。


恭介さんは空いた期間を埋めるみたいに毎日のように私を呼んで、たくさん予定を入れてくれた。


祐里恵、祐里恵と恭介さんが呼ぶのに合わせて、何でも語尾に恭介さん恭介さんとつけて返していたら。


あれほど苦戦していたのが嘘みたいに、恭介さんと呼ぶのは思いの外早く慣れた。
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