ダイヤモンドウエディング~キスからはじまる永遠の愛~《完》
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でも、神様は残酷で俺達を奈落の底に突き落とした。
心音が聞こえず、胎内で赤ちゃんは亡くなっているとのコト。

「心音が聞こえないって…冗談でしょ?先生」
俺は籠田先生に食って掛かった。

3度目の人工授精でようやく授かった命。

小陽の妊娠を知って喜びに湧いたのは1週間だった・・・
俺と小陽がパパとママの気分を味わえたのは僅か7日。

小陽はベットに仰向けに横たわりながら顔を両手で覆い、静かにすすり泣く。

「泣くな・・・小陽」

付き添った俺も涙が零れそうだったが、必死に耐えて小陽を慰めた。

胎内で亡くなってしまった俺達の子供は掻爬手術で子宮の外に掻き出すコトになった。

手術は午後から・・・

病室で待機する小陽の傍らで俺は手術の同意書にサインする。


「陽那さんには話はしようか?」

「誰にも話さないで・・・赤ちゃんを失った悲しみは私達だけで止めておきましょう」


「小陽・・・」


これは二人だけの秘密。

小陽は俺との約束を頑なに守ってくれた。

「小陽のカラダを傷つけた償いは一生かけて償うよ」

「赤ちゃんが亡くなったのは拓真さんのせいではないでしょ?」
原因は不明。

誰のせいでもなかったーーー・・・


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