下宿屋 東風荘
「おや、何かあったのかい?」と報告を聞く。

「冬弥様、お爺がもう水もほとんど飲めず、冬弥様にお会いしたいと言っております」
「冬弥様、行って差し上げてくださいまし」

今、自分の影になっている眷属は雄雌全部で10匹。
その内の2匹を爺さんにつけていたが、やはり祭りまで持たなかったかと、1匹の狐に自分の分身として代わりをさせ、爺さんにつけていた2匹を自分に戻して、夜道を急ぐ。

人の気配はまだ残っているので、調査にでも人が入っていたのだろう。
社の中に横たわる爺さんの側に行き、声を掛ける。

「御酒ももう飲むことは叶わんのか?」

「私はもう永くない。千年祭が見たかったが……それにこの社を守る力ももう……」

「大丈夫だ。社は私が守ろう。約束する……」

「毎日人が何か裏を掘り返しておる。社の裏には私の珠が埋めてあるのじゃ。冬弥、お主が持っていてくれぬか?」

「あれは、その者の魂と同じ。今珠を持って行ったら……」

「あの珠は代々この社を次ぐものが持つもの。そこに自分の魂の一部を入れて守っているのは知っておろう?お主もしておるから分かるはずじゃ。人間に見つかる前に預かってほしい。そして次の者が来たら渡してやってくれぬか……」
< 28 / 91 >

この作品をシェア

pagetop