好きだなんて言ってあげない


「今、フレンチを習いに行ってるんです、ちょっと難しくてまだまだ下手なんですけど・・・・・」

「家でフレンチとか作るんだ、凄いね」

弁護士さんたちは上手に会話を進めていく。場馴れしているようだ。



「・・・・・矢口さんってどこ目指してるんですかね」

佐野さんがポツリと小さな声で呟いた。

「ん?」

「だって、木下さんにあんなことしといて野波さん狙いかと思ってたら弁護士さんの合コンに参加するし・・・・・じゃあ木下さん、野波さんと別れることなかったやないですか」

「向上心の塊なんやない?目指せセレブ、掴めエリートって。少しでもスペックの高い男を探してるんでしょ」

「・・・・・・・・・・わたしは本当に好きな人と付き合いたいなあ・・・・・」

可愛い。
思わず笑みがこぼれる。

そう、それが普通の考え方だ。

ささくれた心が僅かに癒される。


カチャン!
グラスの割れる音がお店の中に響いた。
店内の人の注目が音のした方向に向く。

「申し訳ありません!」

若い男の子の店員が頭を下げている。カウンターの中からタオルを持ったスーツ姿の責任者らしき人がとんで来る。
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