好きだなんて言ってあげない


周りのテーブルの女性客からもほぅっと息が漏れる。


本気の専務。
イイ男オーラの大盤振る舞い。

矢口たちのテーブルに近付き、「ごめんね、遅くなって」と詫びながら端の席に座った。

矢口たちは突然現れた隙のないイケメンに言葉も出ないようだ。

さっきまでは興味もなかったくせに。

我に返った矢口が飲み物の注文は?と極上の笑顔で話しかける。

「矢口です、よろしくお願いします」
さっきも自己紹介したのに。

専務がジャケットの内ポケットから名刺を取り出し、女の子たちに配ると目の色が変わるのが分かった。

「折田繊維の折田さんってことは・・・・・」

「親父が社長で祖父が会長をしてるよ」

矢口に蕩けそうな笑顔で応える。

「結弦はさ、タダの御曹司じゃなくて今あちこちに展開してるファストファッションOLLyを成功させた立役者でもあるんだ」

さっきまで専務が身に付けていたものだ。そういえば折田繊維の関連だ。

「ええっ、凄い!わたしも愛用してますぅ」

気持ちわるいくらい甘ったるい。

どうやら矢口は弁護士から専務に目標を替えたらしい。流石に銀行で働いているだけあって上場企業の役員の方が実入りがいいと瞬間的に計算したか。

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