好きだなんて言ってあげない
矢口が専務に身体を擦り寄せていき、媚びるように取り留めのない話をしていた。
なんだろう
胸がざわつく。
矢口がさり気なく専務の腕に触る。
肌をざらりと撫でられるような不快感。
「杉浦さん、大丈夫ですーーー」
急に黙りこくったわたしを心配して佐野さんが聞いてくれようとしたとき、隣から笑い声が聞こえた。
「あーあ、結弦の一人勝ちやな、つまらん」
「ホンマや、キミら期待通り過ぎてつまらんわ」
弁護士の2人が急に砕けた態度になる。矢口たちは何事かと訝しげだ。
「矢口さん、キミが今媚びてんの、さっきまでそこにいた冴えないクンやで」
矢口が目を見開く。
「洋服屋ですって言うたら興味無さそうにしてたやろ。はっきり名前を言わんかっても見事に誰も聞き返さへんもんなあ」
専務が口元を上げて胸ポケットから先刻のビン底メガネを出してかけた。さては店員も一枚噛んでたのか。
「職業差別?それともオトコマエに目が眩んだ?」
楽しそうに弁護士たちが矢口たちを貶める。
「窓口で弁護士の名刺出して合コンしませんかって言うたら二つ返事やもんなあ、チョロいわ〜キミら」