好きだなんて言ってあげない


山岸がグラスのワインをキュッと飲み干した。

「・・・・・お見事ですね、相当キツイ筈ですよ」

「わたしなら泣くかも・・・・・」

「それだけ専務も怒ってたってことやろ、あの痛々しい木下さんを見て」


無言でグラスを弄んでいた手が止まった。

専務は約束通り仕返しをしてくれた。
矢口は当分立ち直れないだろう。


優しい、一途なこまりが誰にも何も言わずに泣くから


親友のカノジョだったこまりのために


守ってやりたいと誰もが思うこまりのために




専務が誰より愛しく思うこまりのために




復讐を果たした。



「杉浦さん!?」

びっくりしたように佐野さんがわたしを呼ぶ。

視界が歪む。

どんどん滲んでいく。


わたしはバカだ。


今更気付くなんて。


今更思い知るなんて。


視界の端に専務がテーブルを回り込んでやって来るのが映った。

ダメーーーーーー!


言えるわけない。

話せるわけない。


気付いたらお店を出てタクシーが拾える大きな通りまで走っていた。
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