イケメン双子と、もれなく『腐』の付く残念女子と。
ヘアサロンを後にして、どれくらい歩いただろうか。凛は後ろを歩く碧羽を振り返り、満足げなドヤ顔で彼女にこう言う。
「碧羽♪ さあ、着いたよ。疲れたろ? お疲れさま。なかで少し休憩しようね」
凛が碧羽に労いの言葉をかける。それに負けじと、漸も彼女にヨイショした。
「悪かったな、こんなところまで歩かせちまってよ」
「ううん、ちょっと疲れたけど、だいじょうぶ。でも……ここって?」
「ふふふ、入れば分かるよ」
眼前のビルディングを不思議そうに窺う碧羽に、凛が勿体ぶった口調で意味あり気なことを口にする。
双子は碧羽の手を取り、迷わずビルへと足を進めるのであった。
大廈高楼(たいかこうろう)と建ち並ぶ、翡翠ヶ丘のエコノミック・シティ。
競い合うように建つオフィスビルのなかでも、ひと際うつくしい外見を持つ中層ビル。
白と白銀のコントラストが明媚な、総ガラス張りのビルディングには、『atelier-TSUBAKI-(アトリエ ツバキ)』とサインボードが掲げられている。
ガラスの自動ドアをくぐりエントランスを進むと、レセプション・デスクに座る美しいレセプショニストたちと目が合う。
ふたりの女性は双子を認めるなり、恭しく立ち上がって礼をする。
凛は彼女たちと顔見知りなのか、いつもの胡散臭いアルカイックスマイルを湛えたまま、軽く手を挙げて彼女たちのまえを通り過ぎる。
漸に至っては、意に介すこともなかった。