京都チョコレート協奏曲
いちくんがピシリと固まって、みるみるうちに赤くなった。
湯気が上がりそう。
平ちゃんが、いちくんの隣であわあわしている時尾ちゃんに、人懐っこい笑みを向けた。
「俺ら、これから飯に行くんだけど、一緒に来るだろ? いっちーが時尾ちゃんのぶん奢(おご)るし。ってことで、腹減りすぎだから早く行こうぜー。もう学食でもどこでもいいや」
「平ちゃん、おれ、ケニアのオムレツと牛すじが食いたくなった。全員、下宿はあっちの方角だし、ケニアでよくない?」
「いいよ、決定。時尾ちゃん、今からケニアで晩飯ってことでOK?」
「は、はい」
時尾ちゃんは、まだ固まってるいちくんの袖を、そっと引いた。
いちくんはビクッとして、時尾ちゃんを見て、視線を床にさまよわせる。
いちくんのリアクションが新鮮すぎておもしろい。
今日の晩飯はうまそうだ。