京都チョコレート協奏曲


ふと、おれのポケットでスマホが震えた。


トークアプリに、新着のメッセージ1件と画像1件。


花乃ちゃんからだ。


親指が反射的に動いて、花乃ちゃんとのチャットの画面を起ち上げた。



〈意味がわからへんところ、あってんけど。これの意味〉



メッセージの入った吹き出しの下に、セルフィーが1点。


細い首に黒猫のチョーカーを付けてそれを指差して、ちょっと上目遣いでこっちを見ている花乃ちゃん。


まなざしに、おれは射抜かれる。


ドキリとした心臓が、そのまま速いリズムで走り出す。



10代だな、やっぱり。


そんな生意気なアングルの自撮りがどうしようもなくかわいいって、高校生の特権だ。



おれの既読を確認したのか、花乃ちゃんがもう1件、メッセージを送ってきた。



〈このチョーカー、どういう意味なん?〉



数学のノートに挟んできた紙包みに、カードは添えなかった。


表に「花乃ちゃんへ」とだけ書いた。


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