京都チョコレート協奏曲
どうしてチョーカーだったのか、どうしてこのタイミングなのか、自分でもよくわからない。
おれはけっこう、その場限りの判断や何となくの衝動で生きている。
贈りたいと思ったから贈っただけ。
複雑な意味はない。
「いちくん、平ちゃん。おれ、ちょっと先に外に出てる。電話するから」
断りを入れて、詮索されないうちに、洋館を後にする。
2月の湿った冷たい夜気の中、見上げる空にはオリオン座。
かじかみかけた指先で、通話アイコンをタップする。
呼び出しを待つ間、1秒、2秒。
〈……もしもし?〉
威勢がいいはずの声が、電波の向こうで臆病そうに縮こまっている。
おれ、そんなに不安にさせたかな?
小さく笑って、おれは告げる。
「あれの意味はね、花乃ちゃんに似合いそうだと思ったから。チョーカーって、首輪みたいでかわいいよね」
〈首輪!?〉
「冗談だよ。バレンタインにチョコ以外のものを贈ったって、問題ないだろ? 気に入ってくれた?」