騎士団長殿下の愛した花
森人が人間との友好の意志を見せるのは歴史上でも類を見ない事で、しかも交渉相手はレイオウルのみという指定だったため大騒ぎになったらしい。
まさか、森人最強と呼ばれた歴戦の戦士が、たった一人の『若造』の言葉に絆されたとは誰も予想できないだろうから。
レイオウル、ヤーノ、ルーベンが主となり行われた友好交渉は特に大きな障害もなく概ね上手くいき、近く本格的に交流が始められるかもしれないのだそうで、それは少し楽しみである。
レイオウルは森人と人間の友好に尽力したことを評価され、彼に王位が継承される事が決まったそうだ。
第三王子のユーレンは今回の件で勿論王位継承権は剥奪、監視付きで辺境に飛ばされ、また第一王子のメリキスは権力争いに発展する事を避けるためか早々に王位継承権を返上し公爵位を与えられていた。元からあまり王位には興味が無かったらしく、寧ろ国政など面倒臭いと宣っていたそうで、1番皆に良い形で事態は収まったのかもしれない。
世論も彼に対して好意的だったため、王は早めに王座を明け渡すことに決めたらしい。
かくして彼は弱冠22歳にして国王になったのだという。
しかし王になるとある問題が発生することがわかっていた。花嫁である。国王である以上跡継ぎが必要であり、どうあれレイオウルは誰かを娶らねばならなかった。
そのため自分に王位継承権が渡ると決まってから、フェリチタの捜索を本格的に開始したそうだ。そもそも生きているのかすらわからなかったが、フェリチタがアンのパイ屋で働いていたため、比較的早く発見できたのだという。
そして今日、遂に即位式が行われた。レイオウルは、フェリチタを迎えに行くのは自分が王になった時だと決めていたのだそうだ。
こうして4年の時を経て───2人は、二度目の再会を果たしたのである。