騎士団長殿下の愛した花
くくっ、と肩を揺らすメリキスはまるで悪戯っ子のような楽しそうな顔だった。
「心配するな、この事は責任を持って墓まで持っていく。俺も関わっているわけだしな」
相変わらず口調は皮肉げだが、その声色は笑みを含んでいる。
「そう、力は巧く使えよ国王陛下。お前ならいいかと思ったから俺は手を引いたんだ。まあ俺は柄じゃないと前から思っていたから丁度良かったんだが」
肩を竦める兄殿下にフェリチタは頭を下げた。
「ありがとうございます、メリキス殿下」
「ほう、改めて見ればなかなか美人じゃないか。『あの騎士団長殿下』を射止めた女には興味があるが」
「兄上っ!」
「……手を出したらあいつに殺されそうだからやめておこう」
フェリチタに向かって手を伸ばしていたメリキスはレイオウルに大きな声を出されて巫山戯るようにぱっと両手を広げた。
そうして2人が立ち上がったところで、彼は愉快そうな笑顔を顔にはりつけてこう告げた。
「まあ、社交を熟さなければならなくなった以上、これからが色々と大変だろうから覚悟しておくことだ。俺はお前達が上手くいく事を願ってるよ」
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その後城へ戻ると、当然の如くレイオウルは臣下から酷く咎められた。
「陛下!差し出がましい事を承知で申し上げますが、このように気軽にお出かけになられては困ります、陛・下!陛下には幼い頃から抜け出し癖がございますが、もう少し自覚を持ってくださいませ!即位式の後に居なくなられるなど……城内がどれほど騒然となったことか……」
殆ど悲鳴のような声に彼はきまりが悪そうに目を逸らす。
「いや、うん、悪かった……でもすぐ帰ってきたよ。目的もちゃんとあった」
「目的?一体何が……陛下、そちらの方は……」