騎士団長殿下の愛した花



準備や練習などに追われ、気がつけばあっという間に夜会の日になっていた。ルウリエと数人の侍女に手伝われ支度を終える。

「うふふふ……完璧ですフェリチタ様!見てください!」

怪しい笑い声と共に姿見を差し出すルウリエ。

ウエストの細さを強調するようなふんわりとしたベルラインのドレス。バストからウエストにかけてはぴったりと身体に沿うタイトなデザインで、スカート部分はチュールのペチコートでたっぷりと膨らんでいる。裾の長さは床まで届くフルレンクスで、踊る時に足が取られそうで少し不安だ。クリスタルビーズやパールがあしらわれ煌びやかで、少女達が幼心に憧れる、お姫様が着ている素敵なドレスそのもの。

「フェリチタ様のお綺麗な瞳の色に合わせて淡い空色のものにしたのですが、どうでしょう?」

「うん、とっても気に入った!ルウ、ありがとう」

ぱっと嬉しそうに満面の笑みを浮かべるルウリエ。かと思うと今度は顔を曇らせた。

「あの……お耳に入れたいことがございまして」

「どうしたの?」

「シャノット子爵家がフェリチタ様の事を良く思っていないようなのです。ご存知かもしれませんが、シャノット家のご令嬢のリーメイ様がレイオウル陛下の事を慕っていらっしゃるのは有名な話なので……そのためではないかと思われます」

フェリチタはぴくっと眉を動かした。シャノット子爵……久し振りに聞いた名前だが、当然嫌な予感しかしない。

「夜会で何かしてくるかもってこと?」

「その可能性もあるかと思います」

「わかった。ありがとう、気をつけておくね」

不安そうなルウリエに頷いたところで呼び出しがかかる。

レイオウルと合流し、フェリチタはその姿を見て思わず目を細めた。

(今こんなこと思うべきじゃないかもしれないけど……うん、かっこいい……)
< 156 / 165 >

この作品をシェア

pagetop