騎士団長殿下の愛した花
「覚えてなくっても、離れていた時間が長くても、きみを好きな気持ちは止められなかったの。
今ならちゃんとわかる。私は何度きみと出会っても、絶対にきみを好きになるよ」
「……フェリチタ」
「奇跡なんてあるかわかんない。でも、もし本当に奇跡が起こったんだとすれば───それは運命を手繰り寄せたみたいに、きみとまた出会えたことだと思う」
あの時も、今も。
そっと青年の手を握る。その手がびくりと震えた事に気がついてフェリチタは彼の琥珀色の瞳を覗き込んだ。
「レイ」
レイオウルは手の震えを咎められた事がわかって、誤魔化すように口を開いた。
「だって……大切過ぎて、怖い。守れなかったら?また急に居なくなったら?長かった、やっとここまで来たのに、やっと胸を張って隣に居られるのに……!
戦争が終わった今、もう剣が扱えても意味が無い……だから、王になって権力(ちから)を持ってから迎えに行こうって決めてたけど、っ……?」
フェリチタはレイオウルの唇に指を当てて言葉を遮った。
「私は、怖い怖いっていつも思われながら一緒に居たくない」
「……ごめん」
違う、とフェリチタは首を横に振った。
「レイは、たとえ私がどこに行ったって、きっと何度でも迎えに来てくれるでしょう?」
「……もちろん」
呟いたレイオウルが意表を突かれたように大きく目を見開く。
「そうだね、僕は絶対にお前を捕まえに行くよ」
「それなら怖い事なんてなーんにもないよ。何度離れても、何度だって出会えばいいんだから。
レイが王様になってたことも、驚いてないって言ったら嘘になるけど……でもやっぱりレイはレイだもん。4年経ったら当然変わってる所もあるけど、私を大事に思ってくれる所も、私が好きな所も、何も変わってない」
上体を起こしてぎゅっと首に抱きつく。